裳華房 量子力学選書
「場の量子論 — 不変性と自由場を中心にして — 」
坂本 眞人 著
check 解答例と補足説明
この「 check 解答例と補足説明」は、教科書と一体のものとして書かれています。
教科書本文中に
⟨check
⟩として与えられている問題の詳細な解答だけでなく、
問題を解く上での考え方やちょっとしたテクニックについても随時コメントを加 えています。もちろん、教科書本文同様、すべての式を飛ばすことなく誰もが式 を追うことができるように、解答例では丁寧な導出を心掛けました。また、ペー ジ数の制約上、教科書では割愛せざるを得なかったトピックについても解説を 加えました。場の量子論の理解をより深めるためにも、教科書と合わせてこの
「 check 解答例と補足説明」をご活用ください。
量子力学選書「場の量子論 — 不変性と自由場を中心にして — 」
裳華房、坂本眞人著
第1章 check 解答例と補足説明
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2020/03/31
全面的に誤植等を修正。また、よりわかりやすい説明となるように、適宜加筆修正を行った。
2014/11/22
解答例の誤植を修正。
2014/04/09
第 1 章の解答例をアップ
<< 内容 >>
• check 1.1 ∼ check 1.6 の解答例
check 1.1
(1.25) で与えられる Λ = P, T, P T が、それぞれ (1.22) でのクラス (2), (3), (4) に属す ることを確かめよ。また、 x
µ→ x
′µ=
∑
3 ν=0Λ
µνx
νの変換の下で、 P は空間反転 (x
′0= +x
0, x
′i= − x
i) 、 T は時間反転 (x
′0= − x
0, x
′i= +x
i) 、 P T は時空反転 (x
′0= − x
0, x
′i=
−x
i) を引き起こすことを確かめてみよう。
下記で定義される P, T, P T がそれぞれ教科書本文 (1.22) でのクラス (2), (3), (4) に属す ることを確かめる。
P =
1 0 0 0
0 − 1 0 0 0 0 − 1 0
0 0 0 − 1
, T =
−1 0 0 0 0 1 0 0 0 0 1 0 0 0 0 1
, P T =
−1 0 0 0
0 − 1 0 0
0 0 − 1 0
0 0 0 − 1
(1) まず、それぞれの行列の行列式を求める。
det(P ) = (+1) × ( − 1)
3= − 1 det(T ) = ( − 1) × (+1)
3= − 1
det(P T ) = ( − 1)
4= +1 (2)
また、それぞれの行列の (00) 成分は
(P )
00= +1 (T )
00= − 1
(P T )
00= − 1 (3)
で与えられる。したがって、 P, T, P T は教科書本文 (1.22) でのクラス (2), (3) ,(4) に属する ことがわかる。
次に、 P は空間反転、 T は時間反転、 P T は時空反転を引き起こすことを確かめる。
x
0x
1x
2x
3
−→
P
x
′0x
′1x
′2x
′3
=
+1 0 0 0
0 − 1 0 0
0 0 − 1 0
0 0 0 − 1
x
0x
1x
2x
3
=
x
0− x
1− x
2− x
3
x
0x
1x
2x
3
−→
T
x
′0x
′1x
′2x
′3
=
− 1 0 0 0
0 +1 0 0
0 0 +1 0
0 0 0 +1
x
0x
1x
2x
3
=
− x
0x
1x
2x
3
x
0x
1x
2x
3
−→
P T
x
′0x
′1x
′2x
′3
=
− 1 0 0 0
0 − 1 0 0
0 0 − 1 0
0 0 0 − 1
x
0x
1x
2x
3
=
− x
0− x
1− x
2− x
3
(4)
これらの結果から、 P は空間反転、 T は時間反転、 P T は時空反転を引き起こすことがわ かる。
⃝ !
行列表示が便利なときもあるが、行列にこだわりすぎると後で出てくるテンソルが理解できなく なる。下の
4つの表記が同等であることを確かめ、今後は一番下の表記
(8)に慣れるようにして ほしい。
x0 x1 x2 x3
−→
x′0 x′1 x′2 x′3
=
Λ00 Λ01 Λ02 Λ03 Λ10 Λ11 Λ12 Λ13
Λ20 Λ21 Λ22 Λ23 Λ30 Λ31 Λ32 Λ33
x0 x1 x2 x3
+
a0 a1 a2 a3
(5)
~w
x0 x1 x2 x3
−→
x′0 x′1 x′2 x′3
=
Λ00x0+ Λ01x1+ Λ02x2+ Λ03x3 Λ10x0+ Λ11x1+ Λ12x2+ Λ13x3 Λ20x0+ Λ21x1+ Λ22x2+ Λ23x3 Λ30x0+ Λ31x1+ Λ32x2+ Λ33x3
+
a0 a1 a2 a3
(6)
~w
x0 −→ x′0=
∑3 ν=0
Λ0νxν+a0
x1 −→ x′1=
∑3 ν=0
Λ1νxν+a1
x2 −→ x′2=
∑3 ν=0
Λ2νxν+a2
x3 −→ x′3=
∑3 ν=0
Λ3νxν+a3 (7)
~w
xµ −→ x′µ=
∑3 ν=0
Λµνxν+aµ, (µ= 0,1,2,3) (8)
最後の表記
(8)で
Λµνは(行列ではなく)単なる係数なので、他の量と順番を入れ換えてもかま わないことに注意しよう。たとえば、
(8)を
xµ −→ x′µ=
∑3 ν=0
xνΛµν+aµ, (µ= 0,1,2,3) (9)
と書いてもかまわない。なぜなら、
∑3 ν=0
Λµνxν= Λµ0x0+ Λµ1x1+ Λµ2x2+ Λµ3x3
=x0Λµ0+x1Λµ1+x2Λµ2+x3Λµ3=
∑3 ν=0
xνΛµν (10)
が成り立つからである。
check 1.2
A
µ, B
µをベクトル、 T
µνを 2 階のテンソルとしたとき、 A
µB
µ, A
ρT
ρµ, A
µB
νはそれぞ れ、スカラー、ベクトル、 2 階のテンソルの変換性をもつことを確かめてみよう。
上の結果から、変換性を知りたいときは、和の取られた添字は無視してよいことがわかる。例えば、
AµBµ∼ A•B•, AρTρµ∼A•T•µと見なしてよい。
ここで示すことは、 A
µB
µ, A
ρT
ρµ, A
µB
νはそれぞれ、スカラー、ベクトル、 2 階のテン ソルの変換性をもつこと、すなわち、
A
′µB
′µ= A
µB
µ(11)
A
′ρT
′ρµ= Λ
µλ(
A
ρT
ρλ)
(12) A
′µB
′ν= Λ
µρΛ
νλ(
A
ρB
λ)
(13) である。
まず、 (11) を示す。教科書本文 (1.26) と (1.27) の定義から、反変ベクトル A
µと共変ベク トル B
µは次のように変換する。
A
′µ= Λ
µρA
ρ(14)
B
µ′= B
ν(Λ
−1)
νµ(15)
⃝ !
ここで注意すべき点は、教科書本文
(1.26)と
(1.27)、すなわち、
A′µ= ΛµνAνと
Bµ′ =Bν(Λ−1)νµをそのまま
(11)左辺に代入してはいけない、という点だ。なぜなら、そのまま代入してしまうと
A′µB′µ=(ΛµνAν) (
Bν(Λ−1)νµ)
( ← 添字の使い方を間違った例)
となり、右辺には
νの添字が
4つもあり、どの
νとどの
νの和がとられているのか、わからなく なってしまうからである。このようなときは、
(14)のように片方の
νの添字を別の添字(
(14)で は
ρ)に書き換えておく必要がある。初学者はこの点をよく間違えるので注意しておこう。
(14) と (15) を (11) に代入して A
′µB
′µ= (
Λ
µρA
ρ) (
B
ν(Λ
−1)
νµ)
= A
ρB
ν(Λ
−1)
νµΛ
µρ| {z }
δνρ
= A
ρB
νδ
νρ| {z }
Bρ
= A
ρB
ρ= A
µB
µ= ⇒ (11) (16)
を得る。
⃝ !
上の計算についてコメントしておこう。
2番目の等号では、
Λµρおよび
(Λ−1)νµは単なる係数 で行列ではないので順番を自由に入れ換えても構わないことと、
Λ−1が
Λの逆行列であること
((Λ−1)νµΛµρ=δνρ)を用いた。
4番目の等号では、クロネッカーシンボル
δνρの性質
(Bνδνρ=Bρ)を用いた。最後の等号では、
ρの添字を
µに置き換えた。これは
ρについて和がとられているの で、(他の添字と重複しなければ)任意の添字を使ってよいことを用いた。(このような添字はダ ミーインデックスと呼ばれる。)
次に (12) を示すために、 A
ρと T
ρµの変換性を下に与えておく。(和がとられている添字 が重複しないように注意しよう。)
A
′ρ= A
α(Λ
−1)
αρ(17)
T
′ρµ= Λ
ρσΛ
µλT
σλ(18)
これらを (12) の左辺に代入して、
A
′ρT
′ρµ= (
A
α(Λ
−1)
αρ) ( Λ
ρσ| {z }
δασ
Λ
µλT
σλ)
= Λ
µλA
α(
δ
ασT
σλ| {z }
Tαλ
)
= Λ
µλ(
A
αT
αλ| {z }
AρTρλ
) = ⇒ (12) (19)
を得る。
最後に (13) を示す。そのために、 A
µと B
νの変換性を下に与えておく。
A
′µ= Λ
µρA
ρ(20)
B
′ν= Λ
νλB
λ(21)
ここでも、和がとられている添字が重複しないように気を付けよう。これらを (13) 左辺に 代入して
A
′µB
′ν= (
Λ
µρA
ρ) (
Λ
νλB
λ)
= Λ
µρΛ
νλ(
A
ρB
λ)
= ⇒ (13) (22)
を得る。
check 1.3
ある慣性系で A = B および A
µν= B
µνが成り立っていれば、任意の慣性系で A
′= B
′および A
′µν= B
′µνが成り立つことを確かめてみよう。
ここで確かめることは、
A = B ⇐⇒ A
′= B
′(23)
A
µν= B
µν⇐⇒ A
′µν= B
′µν(24) である。 (23) での A, B はスカラー量、すなわち、 A
′= A, B
′= B なので、 (23) は自明に 成り立つ。
(24) を示すために、テンソル A
µν, B
µνの変換性を下に与えておく。
A
′µν= Λ
µρΛ
νλA
ρλB
′µν= Λ
µρΛ
νλB
ρλ(25) これらを用いると、
A
′µν− B
′µν (25)= Λ
µρΛ
νλ(
A
ρλ− B
ρλ)
(26)
となるので、 A
µν= B
µν(同じことだが A
ρλ= B
ρλ)が成り立てば、 A
′µν= B
′µνが成り
立つことがわかる。逆に、 A
′µν= B
′µνが成り立てば A
µν= B
µνが成り立つことは、ローレ
ンツ逆変換を考えれば同様に証明できる。
⃝ !
上の証明からわかるように、任意のテンソル型の方程式
Aµ1···µNν1···νK =Bµ1···µNν1···νKは任 意の慣性系で成り立つことがわかる。すなわち、
Aµ1···µNν1···νK =Bµ1···µNν1···νK ⇐⇒ A′µ1···µNν1···νK=B′µ1···µNν1···νK (27)
証明は
Aµ1···µNν1···νK,Bµ1···µNν1···νKの変換性
A′µ1···µNν1···νK = Λµ1α1· · ·ΛµNαN×Aα1···αNβ1···β
K×(Λ−1)β1ν1· · ·(Λ−1)βKν
K
B′µ1···µNν1···νK = Λµ1α1· · ·ΛµNαN×Bα1···αNβ
1···βK×(Λ−1)β1ν
1· · ·(Λ−1)βKν
K (28)
から
A′µ1···µNν1···νK−B′µ1···µNν1···νK
= Λµ1α1· · ·ΛµNαN
(Aα1···αNβ1···β
K−Bα1···αNβ1···β
K
)(Λ−1)β1ν1· · ·(Λ−1)βKν
K (29)
が成り立つことから示される。
このことから、任意のスカラーやベクトルも含めたテンソル型の方程式は、相対論的不変性を自 動的に満たすことがわかる。このことは、同時に任意の慣性系で同じ方程式が成り立つことを意 味する。
check 1.4
関数 p
µf (p
2) は、 p
µ→ − p
µの変換の下で奇関数なので、 ∫
d
4p p
µf (p
2) = 0 が任意の f (p
2) に対して成り立つ。この関係式を不変テンソルの観点から理解してみよう。 (積分
∫ d
4p p
µf(p
2) は定義されているものとする。)
(1) 不変ベクトルは存在しないことを証明してみよう。
【ヒント】任意のローレンツ変換の下で、
ΛµνVν=Vµを満たす非自明な定数ベクトル
Vµが存 在するか?
(2) 関係式 ∫
d
4p p
µf (p
2) = 0 を不変テンソルの観点から説明してみよう。
(1) 不変ベクトル V
µの定義は、定数ベクトルなのだが、ローレンツ変換の下でベクトル の変換性をもつとみなしてもよいベクトルのことである。すなわち、
Λ
µνV
ν= V
µ(30)
を満たす定数ベクトルのことである。以下では、上式を満たす定数ベクトル V
µは V
µ= 0 であることを示す。
以下の証明は行列表記で行うことにする。 (30) を行列表記で書くと
Λ
00Λ
01Λ
02Λ
03Λ
10Λ
11Λ
12Λ
13Λ
20Λ
21Λ
22Λ
23Λ
30Λ
31Λ
32Λ
33
V
0V
1V
2V
3
=
V
0V
1V
2V
3
(31)
となる。ここで、 Λ
µνとして z 軸まわりの θ 回転を考えると
Λ
00Λ
01Λ
02Λ
03Λ
10Λ
11Λ
12Λ
13Λ
20Λ
21Λ
22Λ
23Λ
30Λ
31Λ
32Λ
33
=
1 0 0 0
0 cos θ − sin θ 0 0 sin θ cos θ 0
0 0 0 1
(32)
で与えられるので、 (31) は
V
0cos θ V
1− sin θ V
2sin θ V
1+ cos θ V
2V
3
=
V
0V
1V
2V
3
(33)
となる。上式が任意の θ に対して成り立つためには
V
1= V
2= 0 (34)
でなければならないことがわかる。
同様に、 x 軸まわりの回転を考えることによって
V
2= V
3= 0 (35)
が導かれる。
最後に x 軸方向のローレンツブースト変換を考えると
Λ
00Λ
01Λ
02Λ
03Λ
10Λ
11Λ
12Λ
13Λ
20Λ
21Λ
22Λ
23Λ
30Λ
31Λ
32Λ
33
=
γ (v) −γ(v)
vc0 0
− γ(v)
vcγ(v) 0 0
0 0 1 0
0 0 0 1
, γ(v) ≡ 1
√ 1 − (v/c)
2(36) なので、 (31) に代入すると
γ(v) V
0− γ (v)
vcV
1− γ (v)
vcV
0+ γ(v)V
1V
2V
3
=
V
0V
1V
2V
3
(37)
となり、
V
0= V
1= 0 (38)
が導かれる。
以上の結果より、任意のローレンツ変換に対して (30) を満たす定数ベクトルは V
0= V
1= V
2= V
3= 0 (39) となり、非自明な不変ベクトル V
µは存在しないことがわかる。
(2) まず、
V
µ≡
∫
d
4p p
µf (p
2) (40)
が不変ベクトルの性質 (30) を満たすことを示す。そのために、右辺を次のように変形 する。
V
µ=
∫
d
4p p
µf (p
2)
=
∫
d
4p
′p
′µf (p
′2)
=
∫
d
4p Λ
µνp
νf (p
2)
= Λ
µν∫
d
4p p
νf(p
2)
= Λ
µνV
ν(41)
ここで、 2 番目の等号では積分変数 p
µを p
′µに書き換えた。また、 3 番目の等号では p
′µ≡ Λ
µνp
νの変数変換を行った。このとき、ローレンツ変換の性質より、 d
4p
′= d
4p, p
′2= p
′µp
′µ= p
µp
µ= p
2を用いた。 4 番目の等号では Λ
µνは単なる定数係数なので積 分の外に出した。
定義より( p
µについては積分されているので) V
µは定数であり、かつ、 (41) より不 変ベクトルの性質 V
µ= Λ
µνV
νを満たさねばならない。しかしながら、非自明な不変 ベクトルは存在しないことを上で証明したので、
∫
d
4p p
µf(p
2) = V
µ= 0 (42) が導かれる。
check 1.5
質量 m から、 c と
ℏを適当にかけることによって、長さの次元をもつ量 L を作り、 (1.3) のクライン – ゴルドン方程式の質量項と比べてみよう。
【ヒント】
L=mpcqℏrとおいて両辺の次元を等しくおき、
p=q=−1, r= 1を導け。
すべての物理量の次元は、長さ [L] 、時間 [T ] 、質量 [M ] の次元の組み合わせで表すこと ができる。たとえば、光速 c とプランク定数
ℏはそれぞれ速さと角運動量の次元をもってい るので、 L 、 T 、 M で表すと
[c] = [ 速さ ] = [ 長さ / 時間 ] = [L/T ]
[
ℏ] = [ 角運動量 ] = [mvr] = [M × (L/T ) × L] = [M L
2/T ] (43) このことを用いて、質量 m から c と
ℏの適当なベキをかけることによって、長さの次元を もつ量を作ることができる。すなわち、
[m
pc
qℏr] = [L] (44)
左辺の量を (43) を用いて M 、 L 、 T で表すと次のようになる。
[m
pc
qℏr] = [M
p(L/T )
q(M L
2/T )
r]
= [M
p+rL
q+2rT
−q−r] (45)
これが [L] に等しくならなければならないので、
p + r = 0 q + 2r = 1
− q − r = 0
(46)
を得る。これらを解くことによって
p = − 1, q = − 1, r = 1 (47)
が導かれる。すなわち、
ℏ/(mc) が長さの次元をもつことがわかる。
[
ℏmc
]
= [L] (48)
教科書本文 (1.3) で次のクライン – ゴルドン方程式 { 1
c
2∂
2∂t
2− ∂
2∂x
2− ∂
2∂y
2− ∂
2∂z
2+ ( mc
ℏ
)
2}
ϕ(t,
x) = 0(49) が与えられているが、この中で質量項として (mc/ℏ)
2の組み合わせで与えられている理由 は、上で行った次元解析から理解できる。なぜなら、
[ 1 c
2∂
2∂t
2]
= [ ∂
2∂x
2]
= [ ∂
2∂y
2]
= [ ∂
2∂z
2]
= [ 1
L
2]
(50) であり、これらの量と同じ次元をもつ量が (mc/
ℏ)
2なのである。
check 1.6
電磁気力が長距離力 ( 力の到達距離 = ∞ ) であることから、光子は質量を持たないこと を考察してみよう。
【ヒント】力の到達距離を
L、力の源となる粒子の質量を
mとしたとき、
Lと
mの関係は
check 1.5で 与えられる。この関係は、
1.10節の後半で議論した湯川の中間子論で用いられたものだ。なお、光子が質 量を持たないことは、第
3章で詳しく議論する。もし、新しい力(第
5の力?)が発見されたなら、その 力の到達距離を知ることが重要になる。なぜなら、到達距離からその力の源となる粒子の質量が推測でき るからである。
問いに答える前に 1.10 節で議論した湯川の中間子論をもう一度、復習しておこう。力の 源となる粒子の質量を m としたとき、その力の到達距離 L は大ざっぱに
力の到達距離 L ∼
ℏmc (51)
で与えられる。これは質量 m から作られる長さの次元をもった量が (check1.5 から )
ℏ/mc で与えられるからである。
(51) の力の到達距離は、量子力学と相対論を用いて次のように理解することができる。ま
ず、量子論におけるエネルギーと時間の不確定性関係 ∆E · ∆t ∼
ℏから、 ∆t ∼
ℏ/E が得ら
れる。
∆E として力の源となる粒子の静止質量 mc
2にとると、 ∆t ∼
ℏ/(mc2) の関係は、この粒 子が ∆t の時間の間存在できることを意味する。このとき、 ∆t の時間の間にこの粒子が動 ける最大の移動距離は、光速 c をかけた
粒子の移動距離 ∼ c∆t ∼
ℏmc (52)
となる。力の到達距離 L が粒子の移動距離 (52) だとみなせば、 (51) の関係が得られること になる。
力の到達距離 L と粒子の質量 m との関係 (51) がわかれば、問いに答えることは簡単であ る。電磁気力は長距離力 ( 力の到達距離 L = ∞ ) であり、電磁気力の源となる粒子は光子な ので、光子の質量を m
γとしたとき、 (51) から
m
γ∼
ℏLc
L=∞
= 0 (53)
が得られ、光子の質量はゼロであることがわかる。実際は、光子の質量がゼロなので、電磁 気力は長距離力なのである。
⃝ !
力の源となる粒子の質量を
mとしたとき、ポテンシャルエネルギーは、通常、湯川ポテンシャル
V(r)∝1re−Lrで与えられる。このとき
Lは力の到達距離に対応し、
rは
2粒子間の距離である。
クーロン力は
V(r)∝1rなので、
L=∞に対応することがわかる。このことからクーロン力
(電
磁気力
)を長距離力と呼ぶのである。
量子力学選書「場の量子論 — 不変性と自由場を中心にして — 」
裳華房、坂本眞人著
第2章 check 解答例と補足説明
<< 変更履歴 >>
2020/03/31
全面的に誤植等を修正。また、よりわかりやすい説明となるように、適宜加筆修正を行った。
2014/11/22
解答例の誤植の修正。
2014/04/09
第 2 章の解答例をアップ
<< 内容 >>
• check 2.1 ∼ check 2.4 の解答例
• 『「量子力学は間違っている」は間違っている』の解説
check 2.1
(2.8) を確かめてみよう。
ここでは、時空並進 + ローレンツ変換
x
λ→ x
′λ= Λ
λρx
ρ+ a
λ(λ = 0, 1, 2, 3) (1) の下で、微分演算子 ∂
µ≡
∂x∂µ, ∂
µ≡
∂x∂µが次のように変換することを証明する。
∂
′µ= Λ
µν∂
ν(2)
∂
µ′= ∂
ν(Λ
−1)
νµ(3)
まず、 (3) の変換性を示す。微分のチェーンルールを用いて、
∂
ν= ∂
∂x
ν= ∂x
′λ∂x
ν∂
∂x
′λ= ∂(Λ
λρx
ρ+ a
λ)
∂x
ν∂
∂x
′λ= Λ
λρ∂x
ρ∂x
ν∂
∂x
′λ= Λ
λρδ
ρν| {z }
Λλν
∂
∂x
′λ| {z }
∂′λ
(
∵
∂x
ρ∂x
ν= δ
ρν, 添字 ρ, ν の上下の位置に注意 )
= ∂
λ′Λ
λν(4)
両辺に (Λ
−1)
νµをかけて、 Λ
λν(Λ
−1)
νµ= δ
λµを用いると、
∂
ν(Λ
−1)
νµ= ∂
λ′δ
λµ= ∂
µ′(5) となり、 (3) が得られる。したがって、 ∂
µ=
∂x∂µは ( ベクトルの添字 µ を下付きで書いてあ るように ) 、共変ベクトルの変換性をもつことがわかる。
次に (2) を証明する。議論を簡単化するために、 (1) で a
λ= 0 とおくことにする。これは、
微分 ∂
µ=
∂x∂µ
は、時空並進のもとで不変なので、 (2) の証明には影響しないからである。
ローレンツ変換の下で、 x
λは共変ベクトルの変換性をもつので、
x
′λ= x
ρ(Λ
−1)
ρλ(6) と変換する。この関係を用いると、
∂
ν= ∂
∂x
ν= ∂x
′λ∂x
ν∂
∂x
′λ= ∂(x
ρ(Λ
−1)
ρλ)
∂x
ν∂
∂x
′λ= δ
νρ(Λ
−1)
ρλ| {z }
(Λ−1)νλ
∂
∂x
′λ(
∵
∂x
ρ∂x
ν= δ
νρ, 添字 ρ, ν の上下の位置に注意 )
= (Λ
−1)
νλ∂
′λ(7)
となる。両辺に Λ
µνをかけると
Λ
µν∂
ν= Λ
µν(Λ
−1)
νλ| {z }
δµλ